2019年11月11日

貧しい生い立ちではなかった

両親も私を普通に愛して育ててくれた

それなりに勉強をしてそれなりの青春を過ごした

しかし私はふと自分が他の誰とも違う人間であることに気がついた

私にはいつしか犯罪への愛が芽生えていたのだ

日々その魅力に引き込まれていく自分が怖くて

私は泥を吐き出すように自分自身が惹かれるディテールを

自分の人生のように現実のように小説として書いたのだ

皮肉にもそのネット小説で今私は時間を切り売りしないで済んでいる

歪んでいるという素朴な実感だけが私を虚ろにさせているというのに

でも私は分かってもいる

私にとって家族は真実の愛ってほどじゃないということを

解決したようにそう思えてしまったら

涙が過ぎてきた時間のように止まらなくなってしまうということを

 

譜奏452

2019年11月8日

ふと私は何曜日に生まれたのかと気になって

私の生まれた年のカレンダーを検索してみたら

その日は6日の土曜日になっていた

そして私はそのカレンダーを今日までの分をゆっくりとスクロールして

今までの人生を辿るように夜明けまで眺めていたのである

疲れた目に目薬を差しながら私はつい笑っていた

人の願いって結局は自分を知りたいただそれだけなのではないのかと

普段はそのことはもう解決済みと思っていた自分がおかしかった

叶うなら人として一定の成長をすることで行き着けるならと思うけれど

しかしその願いはきっとムリなのだろうと感じる

たとえ世界の英知で4単語の暗号に解析して細分に数値化しても

悪魔を操る第六感以外の霊能者を見つけ出して拷問したとしても

それは血清の作れない孤高の毒物なのだという気がする

その始まりが摂理によって与えられた生命である以上は

 

譜奏451

2019年11月6日

美しい砂浜

汚れた波

そんな夢だった

私は異教徒の心で

夜の旅を歩いているようだった

私はまだあどけなさの残る少女なのかもしれないし

男を値踏みできる娼婦なのかもしれなかった

大切なのは真実だけだとずっと信じてきたことが

波に奪われていく音のように消えてしまうのを感じながら

私が惜しんでいたのはそれを胸に置いてきた時間だけだった

真実なんてただの出来事に過ぎない

欲望のままに生きてこそ女は女なのだ

私はサンゴの死骸を踏みつけながら月に気づいて

もうあなたの惑わしには乗らないよと笑ってみせた

 

譜奏450

2019年11月4日

コレは決して人には言えないことなのだけれど

一般的には正しく生きなかった女の人、そういわゆる悪女さんの人生に

私は何か不思議な艶の毒のようなものを感じてしまったりしている

そう感じるのはもしかして世界で私一人だけかも知れないし

もしかしてたくさんの女性たちがそう感じているのかも知れないけれど

それは誰にも聞けないことだから今私は私だけでそう思っている

特にその動機に深刻な恋心が絡んでいたりしていると知ると

私はその罪の内容がまるで気になっていないようなフシがある

生き方がヘタだったのかななんて軽い感じで思っていたりしている

コレはきっと私自身の何かがオカシイには違いないとは思う

しかし一方で何かしらの守るべきものを守るために

たとえ誓いの聖書の束に手を置いていても

毅然と強い嘘が言えるという人を私は何故かキラキラした気持ちで

すっごく素敵だと思ってしまったりしてしまうのだ

 

譜奏449