2018年8月31日

人生を

壊れてもいいオモチャみたいに費やして

楽しいことだけを好き放題に自由奔放に生きようと思っても

人は結局その考えは一過性の高ぶりに過ぎずいずれ困難と知る

意義を持たない自由にそれほどのエネルギーはないからだ

もしも人生そのものが一つの生き物なら

その化身は運命という背景を大きく広げて威嚇しながら

人を適度に刺激して冷静に観察しているように思える

人間的に考えればその目的は何なのかということになるが

そこから先はきっと立入禁止なのだろう

愛されずとも人は丁寧に扱われている

私にはその確かな実感がある

だから生きるという事実を決してオモチャのようになどしない

その貪欲さにこそ人間の真の自由が宿っているはずなのだから

 

譜奏266

2018年8月29日

理解を望まない目を開いたまま

私は多くの人と言葉を交わしながら生きてきた

その言葉のほとんどを空疎なものと感じながら

美しく生きることは

私にとっては希いにも満たないあまりにも自然なことだった

だからわたしは悪くないと言った

たとえ交わしてきた言葉は犠牲になると解っていても

それはむしろ誠実なイケニエでしょと言っていた

そして悪くなんかないとまた言ったのに

私は友のようにさえ感じていた黒の漆器を衝動のまま投げ捨てて

時を見失ったように身体を閉じていた

螺鈿の青貝の白い光糸が最後の力のようにあどけなく

わたしを棄てるように細い雨の中でも

強く真っ直ぐ伸びていくのが見えた気がしていた

 

譜奏265

2018年8月27日

次の曲がり角を曲がれば

いつもの場所

潮弛みの中にいるような

ありふれた風景

離れれば近くに思え

近づけば遠くに感じる

私の原景

人々はわたしを通り過ぎ

わたしは幼い空想にとどまっていた

時は始まらず寡黙に終わらない

私は成すことを成すために息をして

海面に光る一瞬の射光のようにでも戻っていければいい

生命あるものすべてが帰る約束の場所

その原初の海に

 

譜奏264

2018年8月24日

実のある打ち合わせをして良い気分で帰ってきて

忘れたような油断をしてメロウなバラードを聴きながら眠ったら

私の眠りは過ぎた日にしか向かわないことを

夢は手厳しく思い知らせてきた

冬の葉も落ちていないのに雨氷が草を打ちつけるシーン

夢は私に嫉妬している

そう思った

長い付き合いだからいろいろと掘り返さないけれど

翌日の夢の羅列映像には少し腹が立った

登場人物のみんながみんなすべてがハッピーエンドの物語

絵にも描けない上滑りの漫画的ハッピー

その中でわたしは笑わされていたのだけれど

何故悲しいのだろうと思わせられていた理由は心に無かった

私のメヌエットはさびしい天使も踊ってくれないようだ

 

譜奏263