2017年4月28日

雑踏を過ぎる人々を

予めの気まぐれな春の前触れを

私はカフェの一面窓を射す陽に視界を歪ませながら

朽ちていく者たちを見送るように見ていた

私自身がそこに居ない安堵を

健やかな傲慢と自覚しながら

この世は根の区別されない価値を比較することで

曖昧なIDをカモフラージュしている曲者だ

寄り添うことに意味があるのかと問うことなど

虚ろな歪みのように萎えていく

極端な判断だろうと思う

しかし私の魂の根は確かに遠い喝采を感じ

私の中の異端を愛し始めていくのを

止められないでいた

 

譜奏55

2017年4月26日

天気雨の夏の日に空を見て

私は鳥になって空を飛んで

遊んでいたいと思った

やがて夕焼けになり

夜になり

キレイな三日月を見て

私は月になりたいと思っていた

そして願えば私は

鳥にも月にもなれると信じていた

思えばそれは

欲望の始まりだった

今私は鳥の死骸を見ても

月を黒く塗りつぶしても

哀しみの影さえ動かない

 

譜奏54

2017年4月24日

人にはスタートを切る季節がある

社会へ夢へ

またはそれを両手に

しかし私はその季節を

耽美の中に漂うようにして過ごした

活気を放つ同世代の群れから外れ

霧の形をした胸の炎と

大気に描がいた幻のような夢を

交互に首を揺らしてみつめていた

選んだ訳ではなく

選ばれたはずでもなく

それが私に与えられたプログラムの

起点に打ち込まれた柔らかな熱の

楔のように

 

譜奏53

2017年4月21日

丸く透き通る水晶のような球体を

人間が生まれながらに

与えられていたなら

その中に

生きる答となるべきものは

例えば水中花のように揺らぎ

示されているのだろうか

私はそんな妄想にやさしく

頷いていたかった

カラーローズと同じ数で

反面に佇む14の漂人が

萎えた宿命のように私を

その球体面から

覗き込んでいたから

 

譜奏52