平坦な退屈の中には
それ故の平安があるものと
社会は匂わせ
多くの人はただそれを信仰し
辺りを見回し
日常の煩雑さと向き合い
対極へと置いて生きていく
そう見えて悲しく捻れていた
私の退屈
死のような退屈
そして私は逃げるように
偽りの苦さを求めた
老いを怖れるあまりに追う
タナトスの火のように
譜奏47
平坦な退屈の中には
それ故の平安があるものと
社会は匂わせ
多くの人はただそれを信仰し
辺りを見回し
日常の煩雑さと向き合い
対極へと置いて生きていく
そう見えて悲しく捻れていた
私の退屈
死のような退屈
そして私は逃げるように
偽りの苦さを求めた
老いを怖れるあまりに追う
タナトスの火のように
譜奏47
―――――ねぇ、あなたはみつけた?
―――――あたたかなぬくもりを
―――――やわらかなまなざしを
―――――強く抱きしめる手を――― ――『GYPSY Ann』より
心にフィルムがあるのなら
灼き付けていたはずの
春の花降る優しさに
微睡んでいた
私の無邪気
絶望にも
希望にも
侵されず
一度の抱擁で
私の欲望は
繭人になることを
望んでいたのかも知れないと
今想う私を
知らせる息も遠く
譜奏46
時の堆積の中にいた人と
心が途切れてしまった午後
私は乱れないリズムを打ちながら
初めてのカフェのテーブルに
手を投げ出した
気がつけば爪床が荒れていた
小さな血液を含んだ皮膚が
接しない点画のように
その色を哀しく見せている
生きるって何故
変質を繰り返すのだろうと思った
時を塞いで息をする力を忘れた
私のこの爪が
与えられた示唆であるかのように
譜奏45
私が呼んでも
何度呼んでも
答えてくれない私が夢の中にいた
私が差し出した手は大きく
彼女の背は小さかった
忘れてきたのと
私は二度言った
一度目は声にならなかったから
白い霧のような風が吹いて
私の手は小さくなり
彼女の唇は紅く濡れていた
今度はその唇が私を呼んだ
なのに私は急いで
小さくした背を向けていた
譜奏44