2018年7月30日

自分をみつけたと感じた秋の夜明け

私の胸の地で発芽して蕾を付けて開いた花弁をみつめて

私はその恵みを与えてくれた太陽光に向かって

手を大きく広げ未来へと歩いていくのだと思っていた

この部屋とも近い将来にお別れすることになると思った時

執着を感じていた木棚が気がかりになって中を空っぽにして

翌朝私は今までの時間を切るように裏の納屋へと押し込んだ

それから私は私の思うようにしか生きなかった

何かの用で帰った時も切った時間を思い出すことはなかった

永遠に咲き続けると思っていた花を見ることを恐れた夜明け

私は夢の中で暴力的に木棚の一番下の引き出しを引っ張っていた

引き出しは湿気で木が膨張して開かなくなっていた

私は夢で叫び心からでも脳からでも思い出を取り出して

そのすべてを焼き払ってしまいたいと空を睨んでいた

 

譜奏252

2018年7月27日

友達もなく信仰もなく生きて老いて

見つけられる希望を探すことは困難だ

しかし術なくいつかしら私はそんな未来を覚悟して

盲目の今を生きるしかないと思う自分になっていた

転機という不可思議なプログラムが私に作用した時

私はあろうことか性悪な悪態をつき

土足で踏みつけるようにそれを否定し最後に泣いた

プログラムはその夜父のように私の心に座標を刻んだ

私が心を決めて白壁にぶつけた幼い一行には

繰り返し問う正しさと

思い遣るだけの優しさだけでは

風にさえ砂山の形を病むように崩されていくように

目指す座標への長旅には耐えられないと

そう書かれてある

 

譜奏251

2018年7月25日

顔も身体も髪も痩せた小さな男の子と女の子が現れて

私の前に立って

男の子は右手をまっすぐ伸ばし女の子は水を受けるように丸くして

両の手を私の前に差し出す

きっとすごくお腹が空いているのだとわかっていた

ポケットに手を入れて歩いていた私は

急いでポケットの中をまさぐるフリをしていたけど

そこには独りぼっちの指しかないことはわかっていた

私はただ立ちすくんで目の前の裸足の指に目を落とす

またいつもの悪夢のリフレインだと判っていても

そしていつものように砂のようになってこう言っているの

ごめんね

わたし

この命しかあなたたちにあげるものがないのと

 

譜奏250

2018年7月23日

悪意のある行動になるのかもしれないと気づいていても

その誘惑の強さに抗えない本質を支えているのは

恐らく人間しか持たない憎しみという遺伝子だ

長く続いてきた人類の歴史の中で

何故この遺伝子は引き継がれ生き残ってきたのだろうと思う

生き抜くために必要とした過渡期があったのだろうか

それとも分別のための安易な神の試みか

私は私の心を考えた

目の前で哀しい憎しみを目撃したからだ

探られた私の心は眠りを妨げられた子供のような顔をしていた

キレイな月の夜だったのに

雨上がりのキレイな風が私の頬をくすぐっていったのに

私は意味なく流れる涙を拭えないまま思っていた

愛の陰にそんな生き物などいるはずがないのにと

 

譜奏249