誰にも負けないと頑なに決めて生きていた頃
私はこれという理由もなく頻繁に引っ越しを繰り返していた
ダンボールの半分は開けられていない
落ち着いていく自分に馴染めなかった
敢えて言えばそんなノイズにイラついていたせいなのかもと思う
雨風が孤独を押し込むように聞こえていた夜
ふいにダンボールの中がカビてはいないかと気になって
一番手近なダンボールのガムテープを乱暴に剥がした
見つけた古いアルバムに二つ折りの写真があった
開いてみると亡き父の若かりし頃の姿が写っていた
悲しみで折った記憶のようにその部分だけが真新しく光っていた
父の声が風を破って聞こえたような気がした
ピンクのキャンディを口に入れて目を閉じて7つ数えて目を開いたら
ほお〜ら、いつでもここにいるからな、と父が笑った日のことを
譜奏409