聲が遠ざかる
一人歩いてる
誰の足音も聞こえない夜明け
影も刻めない男に抱かれて
何がわたしをつかんでいたの
砂のように落ちるさびしさが
胸の葉を揺らす
自分の醜さを誰に話せるの
歌が聴こえる
夢見るように
哀しげに一音に
煌めいた愛を抱きしめるように
生まれ変わって蝶になれたら
空に遊んで舞うのに
譜奏405
聲が遠ざかる
一人歩いてる
誰の足音も聞こえない夜明け
影も刻めない男に抱かれて
何がわたしをつかんでいたの
砂のように落ちるさびしさが
胸の葉を揺らす
自分の醜さを誰に話せるの
歌が聴こえる
夢見るように
哀しげに一音に
煌めいた愛を抱きしめるように
生まれ変わって蝶になれたら
空に遊んで舞うのに
譜奏405
スタンドの引き紐を下げて
デスクに置かれた左手の指の陰をみつめ
もう一度下げて
暗い闇の中でその陰をみつけようと目を凝らして
私はそっと動けなくなっていく
時に命より大切な想い出が
あるように思えてしまう私の不条理は
決して魔物ではない
限りを尽くしてください
今触われる人を
今抱きしめられる人を
愛だけで
夢だけで瞳だけでしか
触われなくなる前に
譜奏404
海に逃げて
空に逃げて
私はいつもそこにはいない
最後の証が壊れないように
守っているだけなのに
離れていくの
私が希う以上に
離されていってしまうの
ただ恐いって思っただけなのに
月よまた満ちて解離するのでしょ
憐れみを知る者のように
だからもうやさしそうにしなくていいの
でも約束通り私と同じ分だけは
傷ついていてもらうからね
譜奏403
一人で生きるようになって
両親のことを思い出す時
いつか踏みつけたスミレの香りが私の胸に充満していく
誰よりも両親が誇りに思える生き方をしたいと
私はただ願い誇りの目を背に意識して生きてきた
古いマッチ棒を擦って親指と人差し指で押さえて火を消した夜
2本の白い煙線が歪んでいく姿に涙があふれた
あと何本残っているのだろう
あの日両親の目を盗んで手のひらに隠した小さな罪の火種は
ドアが開くと暗い外を背に入ってきた人がただいまと言い
料理を作っていた人がおかえりなさいと玄関に向かい
わたしは飛び上がって喜んでまとわりついた後にもう寝なさいと言われ
ズルい!と言って口をへの字にしたあと淋しくなって思い直して
おやすみなさい、またあしたね!と言って階段を駆け上がっていった
譜奏402