2019年7月22日

聲が遠ざかる

一人歩いてる

誰の足音も聞こえない夜明け

影も刻めない男に抱かれて

何がわたしをつかんでいたの

砂のように落ちるさびしさが

胸の葉を揺らす

自分の醜さを誰に話せるの

歌が聴こえる

夢見るように

哀しげに一音に

煌めいた愛を抱きしめるように

生まれ変わって蝶になれたら

空に遊んで舞うのに

 

譜奏405

2019年7月19日

スタンドの引き紐を下げて

デスクに置かれた左手の指の陰をみつめ

もう一度下げて

暗い闇の中でその陰をみつけようと目を凝らして

私はそっと動けなくなっていく

時に命より大切な想い出が

あるように思えてしまう私の不条理は

決して魔物ではない

限りを尽くしてください

今触われる人を

今抱きしめられる人を

愛だけで

夢だけで瞳だけでしか

触われなくなる前に

 

譜奏404

2019年7月17日

海に逃げて

空に逃げて

私はいつもそこにはいない

最後の証が壊れないように

守っているだけなのに

離れていくの

私が希う以上に

離されていってしまうの

ただ恐いって思っただけなのに

月よまた満ちて解離するのでしょ

憐れみを知る者のように

だからもうやさしそうにしなくていいの

でも約束通り私と同じ分だけは

傷ついていてもらうからね

 

譜奏403

2019年7月15日

一人で生きるようになって

両親のことを思い出す時

いつか踏みつけたスミレの香りが私の胸に充満していく

誰よりも両親が誇りに思える生き方をしたいと

私はただ願い誇りの目を背に意識して生きてきた

古いマッチ棒を擦って親指と人差し指で押さえて火を消した夜

2本の白い煙線が歪んでいく姿に涙があふれた

あと何本残っているのだろう

あの日両親の目を盗んで手のひらに隠した小さな罪の火種は

ドアが開くと暗い外を背に入ってきた人がただいまと言い

料理を作っていた人がおかえりなさいと玄関に向かい

わたしは飛び上がって喜んでまとわりついた後にもう寝なさいと言われ

ズルい!と言って口をへの字にしたあと淋しくなって思い直して

おやすみなさい、またあしたね!と言って階段を駆け上がっていった

 

譜奏402