2017年12月29日

揺れる

自身ではもう輝けない光のルクスが愛日に留まる川面のように

私が置き去りにした過ぎし日の陽光を遮って

抗いもなく堕とされていくように

私の瞳孔を揺れている

悔いのない人生をと

心に力を込めた日が破れた絵本のように

くすんで色褪せていることを

力尽きたルクスはその残影に執着することで

同調させようとしてくれたのかも知れない

私は私の夢の菌糸でなを蝕まれていく

いつかその光に包まれて溶けていく私の翼を

微笑んで見る私を目撃する

その一瞬を知るまで

 

譜奏161

2017年12月27日

首筋に水が落ちた感触の後

目が覚めた私の視界を埋めたのは

夜明けまではまだ遠い深夜の冷気だった

暗い闇にしか見えない一面の黒にも鋭角に繋ぐ目があり

それが鼓動のように動きながら

闇の濃淡を支配していることに気づいてから

私は夜を怖れなくなり

むしろ棲み人となることを望むようになっていった

私と月との関係は

その鼓動から始まっている

こんな風に目覚めた蒼が呼ぶ夜は

私の女性らしさを奪い

向き合う者を弱めようとする感触を無視して

私はその聖水が乾く夜明けを待つことになる

 

譜奏160

2017年12月25日

風も景色もやさしい穏やかな日曜日

お気に入りのカフェのテラスでのんびりと

私は通り過ぎていく人たちを見流していた

白いスニーカーに当たった光が

この穏やかな日のすべてを祝福しているように弾けていく

どんな環境で生まれ育っても人は

最後にはやさしさに行き着く

呼吸するようにそう思えることがうれしかった

しかしそれを知っている私にさえ

やさしさは暗い顔を向けてくる

受け入れることを前提に成り立つものは

例えば娼婦の透けた瞳に美しさを感じた恋のような謎がなければ

その謎がなければ

成立しないのかも知れない

 

譜奏159

宿命前夜(イヴ) ー 蒼の2

蒼い夜を翔ければ

塞がれた定数のように虹が割れ

祈りは変数で充ちていく

私の虹彩に還ってくるはずの

耀きだけを分裂させて

蒼さえ知らない

その前夜に

私の目の色に合わせたように

変貌していく光を追って

私は意志ある者を待つように

答を持たない夜に身を委ねる

手に堕ちた虹の鍵が

一つだけ叶えてくれると約束した希いを

蒼に犠牲にするために

 

譜奏158