2017年9月29日

思秋の退屈な夜に星の光は今の輝きではないと知って

私は不思議というよりむしろうれしいと思う気持ちを感じていた

人間の考えの尺度に合わない力強さは

私にはまだ見ぬ将来への希望への煌めきだった

ミステリアスってね

脳内の化学反応を楽しんでるだけなんだって

条件の良い未来へ流れていこうとしているだけの

企みの女の切り口はしばしば私には斬新だった

何でも言葉に言い換えて何でもまとめてしまう

こんな生き方は案外女には合っているのかも知れない

そう思って優しく微笑み返そうとした時

彼女の目が人形のガラス玉に見えて

今そのものの光は卑しく輝いてすぐに死んでいくのだと解って

私はただたじろいだ石のように動けずにいた

 

譜奏121

2017年9月27日

少女を過ぎた頃

私は自分が液体のように

確かな形を持たない者に思えていた

ガラスでできた肉体が割れて

光の飛沫のように飛び散っても

分割された幾何学図形のピースを一つづつ拾い集めるように

根気よく繋げていけば

パズルのように私自身が完成する

そんな妄想さえ抱だくほどに

私は知りたかった

ただ私自身を

膨張する熱が私を壊死させる前に

尖ったガラス片を身体に突きつけて

たとえ液体に化したとしても

 

譜奏120

2017年9月25日

辛い夜を過ぎたら

夜明けを憎む朝を引きずって

また夜を待つように歩いて

私は持て余していた

時間そのものを

特定できないのに

黴のような痒みを感じて海水に沈んでいく

私の罪のように開いた目を見つめ捨てながら

そして思い出していた

塞がれた涙のように私は父の目を

もう一度心に触れさせてと

風にささやいて

叶うならこの愛しみが

その虹彩にまで届くようにと

 

譜奏119

2017年9月22日

もう二度と

会えないような顔をして

背中を見せる人の後ろ顔を

私はしばしば私の人生で見送ってきた

そしてその人とは必ず心の糸が切れた

例外なく

淋しいというものもなく

哀しさなど一度もなかった

例外なく

私は知っていた

私に弱さは必要無いと

強くなくても仕方ないだろうと思う

ただその後ろ顔はみんな同じ背で

私には醜いモノとしか映らなかったのだ

 

譜奏118