いつまでたっても現れない幸運に
触れない憎しみを抱きはじめていた女は
神様の喜ぶことは何かと考えて正しい日々を過ごし
毎日の祈りも欠かさなかった
いつもより長く希いを祈ったある夜眠りに落ちて
歩いていたら着いてしまったどこかの教会のオルガンの横に
乾いて苦しそうに見えた白薔薇の花弁が目に入って
神様が近くで見ているような気持ちになって
女は聖母のように微笑んで花に香油を塗ってあげた
それが粗い色彩の造花だとわかった時
女は自分の嫉みに触っているような気がしたけれど
作った気持ちと笑みを壊すのが惜しくて知らないフリをしていた
そして朝はっきりとした憎しみの感触を胸に感じながら
女は何故かほっとしている自分に気がついていた
譜奏395