2019年6月28日

いつまでたっても現れない幸運に

触れない憎しみを抱きはじめていた女は

神様の喜ぶことは何かと考えて正しい日々を過ごし

毎日の祈りも欠かさなかった

いつもより長く希いを祈ったある夜眠りに落ちて

歩いていたら着いてしまったどこかの教会のオルガンの横に

乾いて苦しそうに見えた白薔薇の花弁が目に入って

神様が近くで見ているような気持ちになって

女は聖母のように微笑んで花に香油を塗ってあげた

それが粗い色彩の造花だとわかった時

女は自分の嫉みに触っているような気がしたけれど

作った気持ちと笑みを壊すのが惜しくて知らないフリをしていた

そして朝はっきりとした憎しみの感触を胸に感じながら

女は何故かほっとしている自分に気がついていた

 

譜奏395