人生はお金でしょ、と言っていた知り合いの女は
中堅の芸能関係のプロダクションに就職して
すぐにその事務所の社長の愛人になって
しばらくして奥さんの座に収まっていくつかの事業を立ち上げて
事業を軌道に乗せた頃すでに把握していた旦那の不倫を突きつけて
事務所の一番の収益事業を分社化して離婚太りしていた
タマゴ型のおおらかそうな頬が見事に削がれてしまっていた
ねぇあなた、まだ歌なんてことやってんの?しぶといわネ
褒めてないわよ、気持ちは分かるけどさ、でもやってけないでしょ?
チケットを買ってもらう相手として私は定期的に彼女と会う
そしていつもこのような一方的な会話が続いた後
彼女は持ってきた分だけのチケットを買ってくれるのだ
そろそろ考えなきゃね、いつまでも若くないんだからと言いながら
彼女はいつもの淋しげな顔になってやさしく目線をそらすのだった
譜奏396