2018年9月28日

やさしさの中にいたい

人生はただそれだけで価値があると思う

一生愚痴らず悪口を言わないことは至難であっても

反省しながら至難を克服しようと思う気持ちはステキなものだ

だから私は

いつまでたっても人の悲しみには慣れない自分を

悪くないと思っている

人生で成功することは良いことではあるけれど

心に顔に

そして言葉の表情に余白がない人間になってしまっては

本末転倒な気がする

だから私は年老いたら

誰にも侮られるスキだらけの

ただやさしい人になっていたいと思う

 

譜奏278

2018年9月26日

過ぎし日に

夜明けまで走るように

友のために祈ったことがあった

早く朝がきてほしいといらだち

明日など消えてしまえと錯乱したりした

その願いが叶えられなかったと知った時

私は私の祈りを激しく憎んで

殺すように知らない道に投げ捨てた

あれから私は祈らない

二度と目が開かないような恐れがして

近づけない

付随血に生かされている私の海の二種に

複雑に写し出されている宙を見るには

使い慣れた信仰などでは足らないのだ

 

譜奏277

2018年9月24日

貧しい家庭に育って大人になっても貧しくて

そこから頑張ってガンバって名と財を成し

家族を大切に守り周りの人を大事にして

子供の時に忘れていた笑顔を実行している

おそらく他人からも自己採点でも合格の人

そして苦労人らしく気配りも丁寧でソツがなく

自分を客観視する力も持っている

どこから見ても申し分のない人物と言えるだろうと思う

しかし私は生理的にその人を苦手にしていた

詰まるところ彼は演じていたからだ

立体化しない人生に価値などあるのだろうか

私はそう思いながら彼と同じくらいのつくり笑顔を返しながら

結局垣間に見える自惚れ心が伴ってしまえば

それは傲りある愚かさと何ら変わらないのではと思っていた

 

譜奏276

2018年9月21日

その雑踏の不揃いの音に紛れようと歩いていた時

その音律の共鳴域に合ってしまったように

心に置いていた傷が痛み出して息苦しくなって

私は迷うように何度か背後を振り返った

いつでも完全には消え切らないこの気配のようなものは

私がいつか何かの奇跡を起こすことを待っている

いつからか私はそんなふうに思うようになっていた

何のデッサンもなく根もなく

会う人も行く場所も思いつかない私なのに

しかし私の胸に落ちてきたあの日の星は

一日を明確に区切って私に意識を忘れさせない

きっと一瞬にして何かを変えてしまうつもりだと

私は痛みの根を感じながらニヤリとして

身をかわすように雑踏から離れていった

 

譜奏275