2018年9月10日

肩から払いのけるように

愛で守れるものに走っていったら

昔のように話しかけて両手に抱えて

憧れを示したほうがいい

愛は飽き性で

意のままにならないことを嫌うから

腕から抜けていく鼓動を感じたら

孤独を覚悟し尊重した態度を示しながら

救いが必要なことを知らせよう

愛は主観しか持たず

無視されたとしか受け止めないから

そして面倒くさくなったら放置すればいい

殺さなくても愛は対する者を失なえば

すぐに死んでしまうものだから

 

譜奏270

2018年9月7日

いつかの聖夜から

本当にこれがあなたの望む生き方なのと

傷ついたレコードのように

微睡みに落ちかけるたびにくり返される声が聞こえる

声は星空から反響してくるようにくぐもっていて

すべてを一括りにする録音物のように聞こえた

私は腹立ちを覚え言い返そうと思いながら心を噤む

あなたは誰なの

わたしの何を測ろうとしているの

それから私は胸を閉じて考えられなくなるまで考えて

いつものように何かの罰のように眠りに落ちていきながら

やっとあの夜何かを見落とした記憶に気づいていた

星空を見上げながら描きかけたクレヨンの聖夜は

眠ってしまった私の絵だったということを

 

譜奏269

2018年9月5日

嘘の思い出話で泣けるナルシストが

自分の真摯な孤独に包まれる夜

わたしはどうしてこんな人間になってしまったのかと考えた

振り返ってみても家族はみんなマジメ過ぎるほど真面目

世間のレールから外れた人間はいない

夜明けまで考えてダメだったら2度と考えないと決めて

その彼は誰れ時

多分心が弾むようなことを身体で感じたかったのだと気がついた

そしてこんな自分になったのはあんな家庭だったからだと思った

わたしは夢を食べる

語るだけの夢を食べる

平安の形は人それぞれに違うのだからと

少しだけ笑ってそのあと

泣いてることに気づいて顔を見るために鏡を探していた

 

譜奏268

2018年9月3日

闇に堕ちた涙が月に映る時

砂を払うように過ぎた風が

カヤツリ草で編まれた聖書を浮かび上がらせて

めくれた頁にはその月の記述があったと

書士たちに伝えられて

人々は目に見えぬ支配の兆しを嘆いたという

原始

人は罪の種子を与えられ

その発芽のもがきに月を崇めた

種子など死人のように葬ればよかっただけなのに

私は示温インクで書かれた文字に潜在し

読み表れるための熱を待ち続けているように

時という絶望の河の流れに意識を委ね

渇いていく紙の端音に弱い鼓動をと希っていた

 

譜奏267