闇に堕ちた涙が月に映る時
砂を払うように過ぎた風が
カヤツリ草で編まれた聖書を浮かび上がらせて
めくれた頁にはその月の記述があったと
書士たちに伝えられて
人々は目に見えぬ支配の兆しを嘆いたという
原始
人は罪の種子を与えられ
その発芽のもがきに月を崇めた
種子など死人のように葬ればよかっただけなのに
私は示温インクで書かれた文字に潜在し
読み表れるための熱を待ち続けているように
時という絶望の河の流れに意識を委ね
渇いていく紙の端音に弱い鼓動をと希っていた
譜奏267