2019年12月30日

夜の闇に目を開けて天井の四角をめまぐるしく順に見て

止まらない空想を現実に近づけるほどに計画を立てて

空想が現実のような光景になって胸に落ちると

やっと安心して思い出したように眠るような思春期を私は過ごした

ある時は大劇場のバレリーナとして

ある時はスポットライトの中のヴァイリニストとして

今思えば本当に変わった女の子だったと言うしかない

誰しもが一度は夢見る光景を私は現実としてしか考えられなかったのだ

単に私の中の振り子が極端に偏っていただけなのかもしれないけれど

あれから数十年

驚くことに私の空想の振り子はさらに偏って生きる中心核に座している

今日はそんな自分が可笑しくて私はただ笑っていたのだ

明日死ぬなら私の心はきっと微笑んで太陽に向かっていくだろうと思う

たとえ翼を灼かれて堕ちていく天使と同じ運命だとわかっていても

 

譜奏474

2019年12月27日

カトレアの花の香りで目覚めた朝

愛で結ばれた世界で生きていたいと

聖女は鏡に向かって話しかける

その時鏡は柔らかな母性のような微笑みを写し出していた

そうこの貴品に満ちた姿こそが真実の私なのだと聖女は高笑いして

それをもう一度確かめるように聖母のように目を伏せた

暗号で詩を書かなければ見つけられない愛には

限られた人にしか与えられない約束が成されているのだから

愛は私が見える周りにだけあればいい

私が心に持つ必要はないの

だって愛って扱いづらくて面倒くさいんだもの

キメラの翼の下人が私に恋して死と引き換えに贈った詩を天に掲げて

光の帯のように用意されたこの鏡に写る私を私は愛するの

この世に二つとない魔女の鏡を私はこうして今手にしているのだから

 

譜奏473

2019年12月25日

讃美の日曜

男装の月曜

火曜に浮浪の者となり

娼婦の水曜

発赤毒の木曜

女優の金曜

夢自慰の土曜

サルサの月曜

火曜に巡礼の者となり

耽溺の水曜

猩紅熱の木曜

聖女の金曜

性奴隷の土曜

葬列の日曜

 

譜奏472

蒼の夜 4

蒼の夜に。

私は最後に会いたい人がいると言った。

その言葉がエメラルドガラスの匣に消えていく。

今一つを願えば他のすべての望みを忘れてしまうことになると。

やさしく窺うようにパンドラは私に微笑みかけて。

夜明けを待たない星光の帯の道を。

白の燐光を纏う幻のように駆け抜けていった。

解決することがすべてじゃない。

自分さえ目を背ける自分の心の卑しさを。

誰に話せるというのだろう。

言葉を失くした口唇裂の唇から風のように漏れた韻律を。

私は最初の哀しみのように聴いていた。

そして胸に返したその風の聲を懸命に聞き取ろうとしていた。

私もたくさん間違って生きてきたことを知っていたから。

 

譜奏471