2019年12月27日

カトレアの花の香りで目覚めた朝

愛で結ばれた世界で生きていたいと

聖女は鏡に向かって話しかける

その時鏡は柔らかな母性のような微笑みを写し出していた

そうこの貴品に満ちた姿こそが真実の私なのだと聖女は高笑いして

それをもう一度確かめるように聖母のように目を伏せた

暗号で詩を書かなければ見つけられない愛には

限られた人にしか与えられない約束が成されているのだから

愛は私が見える周りにだけあればいい

私が心に持つ必要はないの

だって愛って扱いづらくて面倒くさいんだもの

キメラの翼の下人が私に恋して死と引き換えに贈った詩を天に掲げて

光の帯のように用意されたこの鏡に写る私を私は愛するの

この世に二つとない魔女の鏡を私はこうして今手にしているのだから

 

譜奏473