カトレアの花の香りで目覚めた朝
愛で結ばれた世界で生きていたいと
聖女は鏡に向かって話しかける
その時鏡は柔らかな母性のような微笑みを写し出していた
そうこの貴品に満ちた姿こそが真実の私なのだと聖女は高笑いして
それをもう一度確かめるように聖母のように目を伏せた
暗号で詩を書かなければ見つけられない愛には
限られた人にしか与えられない約束が成されているのだから
愛は私が見える周りにだけあればいい
私が心に持つ必要はないの
だって愛って扱いづらくて面倒くさいんだもの
キメラの翼の下人が私に恋して死と引き換えに贈った詩を天に掲げて
光の帯のように用意されたこの鏡に写る私を私は愛するの
この世に二つとない魔女の鏡を私はこうして今手にしているのだから
譜奏473