2018年4月30日

恋に落ちたらシンデレラは終了

愛に近寄っていったら

その前に愛が必要

必要な愛には必然の証しが必要

証しには愛にしか含まれぬ毒が必要

言葉がたくさん

時間がたくさん

平安は怠惰に頼る

未来を希んだら恋は終了

希む未来に潔癖な契約は不要

その前に過度なる約束が不要

限りある時を愛を飾って訴えて

一度でも天に祈ったら

そのままに振り出しに戻って終了

 

譜奏213

2018年4月27日

50音の頭文字を色に置き換えて文を書いたら

赤から始まってしまうことに気がついて

言葉は色より格下なのだと一人

気がついてしまったような気がして

私はなんでもない時間を何をすることもなく

ただぼんやりとしている私に付き合っていた

タトゥーを消した痕のような宵が過ぎていく

天井扇風機が鉛の花に見える大好きだったコラージュを

どうして忘れていたのだろうと思って思い出して

人間が1000分の1秒にまで留まるには

私そのものがジフィーに身を投げるしかないと思い

それならそれで良いと思った

色彩は天の配備と認めて言葉は人の作り物

問題は私じゃないと思った

 

譜奏212

2018年4月25日

波の刃が沈めた船がゆっくりと

踊るように海底に向かっていく映像を

私は繰り返し夢の中で見ていた

これは夢だと知りながら

叫んだ声が雪のような水泡に変わっていく景色を

美しいとさえ思いながら

ドアが開いて

誰かが入ってくる気配がして私は目を覚ました

犯人は風の軋みの残響が私の耳にぶつかって

私自身の意識が圧縮した中音の抵抗音だった

私は現実の中で生きていない

今日もまた私はそう思って

夢だと分かっていた雪の華を惜しむように

ペットボトルの水を半分飲み干した

 

譜奏211

2018年4月23日

眠る前に本を開いた時

スタンドの灯りがその時を待っていたように切れた

もう何度も読んだ本の文字を殺してあげると言うように

タイトルの文字が微灯に輪郭を作っている

愁いと癒着して離れない遠い過去を

卵のように淋しげに抱いている鳥の顔のようだ

銀の小さな鍵が見つからない

私は思い出したようにふとそう思っていた

その鍵は約束を交わした私以外の人が持つと

鍵穴で銀が溶けてしまうように作られている

約束をした誰かがそう私に言っていた

だから失くさないようにとそう話していた気がする

私の親指と薬指を癒着させるように付けさせて

確かにそう言っていた気がする

 

譜奏210