眠る前に本を開いた時
スタンドの灯りがその時を待っていたように切れた
もう何度も読んだ本の文字を殺してあげると言うように
タイトルの文字が微灯に輪郭を作っている
愁いと癒着して離れない遠い過去を
卵のように淋しげに抱いている鳥の顔のようだ
銀の小さな鍵が見つからない
私は思い出したようにふとそう思っていた
その鍵は約束を交わした私以外の人が持つと
鍵穴で銀が溶けてしまうように作られている
約束をした誰かがそう私に言っていた
だから失くさないようにとそう話していた気がする
私の親指と薬指を癒着させるように付けさせて
確かにそう言っていた気がする
譜奏210