花降る頃
心を病んでいると私に言った人の言葉が
帰り道の雑踏の中で私の胸に寄生するように
私が一度も試さなかったものをくれていた
しかしそれが言葉として形になったのは
彼女の苦しみが私の養分を糧に成虫して
私の心にまた寄生したと感じた時だった
人は今を生きてはいけないーーー
多分そのような意味でしかないと私は思っている
彼女は解っていながら抜け出せない
何かの化身のような時間に怯えて苦しんでいたのだと思う
しかし私を捉えていた本当の驚きは
その中に微弱な迷いさえなく飛び込んでいった
何の躊躇もない彼女自身の苦しみそのものだった
譜奏209