2018年9月19日

午前0時の1秒前にアラームをセットして

明日を守るように夜空を見上げたのは

一目で魔法にかかる星が現れると信じていたから

死んだ星屑の悲しみの灰からは不死鳥が甦って

その光の粒がまた星になると信じて疑わなかったから

私を守れない今日が沈んで夜が落ちて

カリガラスに彫られた蔦模様の角線が

白紫の宝石のように輝いて曲がり線に引かれた後

会う人も行き先も思いつかない私は

指を丸めて空にかざしたつもりの白質の深層で

私より確かなわたしが私をみつめている視線を

知らない人のように見流して

雑然としているということが救いのような雑踏へと

ただ歩き出そうとしていた

 

譜奏274

2018年9月17日

偏った面にしか視界を持たない主体が知りえるものは

すごく似ているように見えて全然違う多くの事だ

人を惑わし苦しめ成長させる徒の花群れの

その景色の根が持っている毒も

陽光の陰で養分として濾過されていく時間に支配されている

少し近づき過ぎていた目を遠ざけてみれば

生きるという行ないは一過性の点ではなく

一筋縄ではいかない愛嬌者の表情を見せながら

こちらを覗き込んでくる自身の一面に過ぎないと解る

律儀な規則のように上下に動き振動しては止まり流れる

それぞれでしかないそれぞれの生き形の波形

その波に美しい踊線を現したいと希うわたしが

もう単なるプログラムのような一コマの哀しみなどで

忘れられていく恐れのために泣く夜はない

 

譜奏273

2018年9月14日

人生に

望みだけをばら撒いた呪文は効かない

もし永遠に消えない火を盗めたら

私はこの身体に隠すだろう

火は変化せずに永遠と寄り添うのだから

人と対峙している存在が曖昧で

その存在感だけを感じて生きていく運命に

私はむしろ祝福を感じながら

しかし私の明日はきっと何かが違うと思い

闇の輪郭線を探すように夜と交わる

そしてこの夜明けこそはと

私に備えられたキメラの発症を待つ夜を重ねて

背に翼を感じる瞬間に焦がれるままに

暁の空を翔び立つ私を思い描いていた

 

譜奏272

2018年9月12日

使命という響きに心が満たされていた時期があった

その言葉に

天から選ばれし者というニュアンスを強く感じていたせいだ

しかし私はその後点在していた自身の斑な欲求をそのままにして

変色していく擬音の後遺症に悩む愚かを犯してしまっていた

私には何故もう少し丁寧な示唆や兆しが

与えられなかったのだろうと今私は思っている

それともこの今がその時なのかとも

叶うなら私の個体の絵素が何かの点描を担い

その全体の色彩が機能で繋がり

些細でも意味を約束されたものであるのならと

私は取り残されたように感じる部屋の中で

悔いをとり繕うように息を吐き

楽観するように強く息を吸い込んでいた

 

譜奏271