その雑踏の不揃いの音に紛れようと歩いていた時
その音律の共鳴域に合ってしまったように
心に置いていた傷が痛み出して息苦しくなって
私は迷うように何度か背後を振り返った
いつでも完全には消え切らないこの気配のようなものは
私がいつか何かの奇跡を起こすことを待っている
いつからか私はそんなふうに思うようになっていた
何のデッサンもなく根もなく
会う人も行く場所も思いつかない私なのに
しかし私の胸に落ちてきたあの日の星は
一日を明確に区切って私に意識を忘れさせない
きっと一瞬にして何かを変えてしまうつもりだと
私は痛みの根を感じながらニヤリとして
身をかわすように雑踏から離れていった
譜奏275