2017年12月4日

切り花が枯れたあと

悲しみでストレスに弱くなっていた老いし人は

水の濁りで切り根が腐敗していくのを知りながら

術もない悲しみと共にただ日々を放置していた

時への憎しみだけを募らせた時間は

褪せていく花色と同調するように老女の胸に残った

夢を見るために時から離れていくために老女はただ眠り続けた

ダンスに明け暮れた若き日の自分が現れる

張りのある汗を黒髪から飛散させて

あの時私は何を思っていたのだろうかと思った

しかし記憶は古いフィルムのように途切れて

不意に差し出された紅い薔薇の花束だけが遺っていた

老女の頬が束の間少女のように微笑んで

時を失なうように消えていった

 

譜奏149

2017年12月1日

スタンドの明かりの陰

遮られているのに何かが動く気配のある陰

穏やかな夜の中の僅かなノイズ

身体の全ての力を抜けないように

完全なる安寧は人には与えられていない

読みかけの本の影をその陰に覆い被せて殺して

私は次のページを剥ぐようにめくる

物事には必ず結末が待っているという摂理のような現実の犯人は

寄せ集められたノイズが

亀裂にまで成長していく習性を持っているせいだろう

まさか禁断の林檎を食べた罪のルールが

まだ継承されているとでもいうのだろうか

そうであるのなら神を含め

感情に自然死はないということになる

 

譜奏148