2017年12月4日

切り花が枯れたあと

悲しみでストレスに弱くなっていた老いし人は

水の濁りで切り根が腐敗していくのを知りながら

術もない悲しみと共にただ日々を放置していた

時への憎しみだけを募らせた時間は

褪せていく花色と同調するように老女の胸に残った

夢を見るために時から離れていくために老女はただ眠り続けた

ダンスに明け暮れた若き日の自分が現れる

張りのある汗を黒髪から飛散させて

あの時私は何を思っていたのだろうかと思った

しかし記憶は古いフィルムのように途切れて

不意に差し出された紅い薔薇の花束だけが遺っていた

老女の頬が束の間少女のように微笑んで

時を失なうように消えていった

 

譜奏149