切り花が枯れたあと
悲しみでストレスに弱くなっていた老いし人は
水の濁りで切り根が腐敗していくのを知りながら
術もない悲しみと共にただ日々を放置していた
時への憎しみだけを募らせた時間は
褪せていく花色と同調するように老女の胸に残った
夢を見るために時から離れていくために老女はただ眠り続けた
ダンスに明け暮れた若き日の自分が現れる
張りのある汗を黒髪から飛散させて
あの時私は何を思っていたのだろうかと思った
しかし記憶は古いフィルムのように途切れて
不意に差し出された紅い薔薇の花束だけが遺っていた
老女の頬が束の間少女のように微笑んで
時を失なうように消えていった
譜奏149