2019年7月31日

誰にも負けないと頑なに決めて生きていた頃

私はこれという理由もなく頻繁に引っ越しを繰り返していた

ダンボールの半分は開けられていない

落ち着いていく自分に馴染めなかった

敢えて言えばそんなノイズにイラついていたせいなのかもと思う

雨風が孤独を押し込むように聞こえていた夜

ふいにダンボールの中がカビてはいないかと気になって

一番手近なダンボールのガムテープを乱暴に剥がした

見つけた古いアルバムに二つ折りの写真があった

開いてみると亡き父の若かりし頃の姿が写っていた

悲しみで折った記憶のようにその部分だけが真新しく光っていた

父の声が風を破って聞こえたような気がした

ピンクのキャンディを口に入れて目を閉じて7つ数えて目を開いたら

ほお〜ら、いつでもここにいるからな、と父が笑った日のことを

 

譜奏409