2018年7月20日

人は価値を探して生きている

例えば正しいと間違いだけの判断で生きていくと

受け入れるか拒むかだけの生き方になり

突発的な強い拒絶を経験すると

孤独に籠る人間になっていってしまう

孤独は個毒と言い換えても良いくらい

まるで好んでいるかのように習慣性が強く

退廃していきながら包み込む錆びた味わいで

重苦しいのに退かせない安堵を与えて人の心を囲う

こんな風に例えていくとかなりの数に思い付く

思い付く数の分だけため息も出るのだけれど

だから私は心の芯から聞こえてくる自分の聲だけを

素直な覚悟を持ちながら聞くようになった

たとえそれがどんなに不合理に思えたとしても

 

譜奏248

2018年7月18日

大事にしている人形でもともだちが欲しがっていたら

あげてしまう

買ったばかりの詩集をちょっと貸してと言われて

返してくださいとは言えなくなってしまう

胸が人より膨らみだしたことが気になって

ラインの出にくいふんわり服ばかり着て

恐がるように恋心を閉じ込めようとしてしまう

誰に何かを言われた訳でもないのに

そんな女が海を好きになった夏に恋愛中毒になって

それは降りそそぐ太陽の光のせいだと思い込んで

ときめきにのめり込むように眼差しを一変させて

性に渇くように身体を使い誘惑を食べ

ときめきが薄らぐことだけを怖れる女になる

欲しいと言われたらあげてしまったわたしの人形のように

 

譜奏247

2018年7月16日

木が裂けるような音がして

振り回されるだけの自分の五感を捨て

素直に感じる素朴な心の鏡だけを見ていようと思った

バランスを取って生きる

その信仰の毒には五感では作れない解毒が必要だ

これだけのことに気づくのに

私はどれだけの排他を罪のように繰り返したのだろうと思った

バイオリンの激しいノイズの塊のようなあの音は

私の鬱屈が弓の形になって吐き出されたものだ

あるがままに思うがままに偏っていく私になりたい

この場所に立ってワルツを踊るように一歩足を踏み出せば

きっと私を待ち焦がれていた私が

点のような私を見つけて遠くから導くように

手を振っているに違いないから

 

譜奏246

2018年7月13日

人間に心という臓器はない

それをいつも胸に感じるのは

生命の遺伝子にどんな意図があるせいなのだろう

写真化されていく記憶の中で

私は唯一の絵が飾られた回廊を歩く

晩夏

私に行くべき道の言葉を示してくれた人の

私への認識のない夏

空を見上げる彼女の目に夕焼けが映っていた

私はその目に写る美しい夕焼けを見ていた

後日そのままの夕焼けが描かれた彼女の絵に驚いた

そしてその時からその絵は私の心の画廊に飾られた

一枚の絵だけが飾られた私の画廊

その画廊が彼女の眠る家になった

 

譜奏245