人間に心という臓器はない
それをいつも胸に感じるのは
生命の遺伝子にどんな意図があるせいなのだろう
写真化されていく記憶の中で
私は唯一の絵が飾られた回廊を歩く
晩夏
私に行くべき道の言葉を示してくれた人の
私への認識のない夏
空を見上げる彼女の目に夕焼けが映っていた
私はその目に写る美しい夕焼けを見ていた
後日そのままの夕焼けが描かれた彼女の絵に驚いた
そしてその時からその絵は私の心の画廊に飾られた
一枚の絵だけが飾られた私の画廊
その画廊が彼女の眠る家になった
譜奏245