穏やかに流れるカノンコードの
最後のセブンス
過ぎていった多くの時間を肯定し
さらに終わらない時の
リフレインを予感させる
二翼の天使
永遠であるはずのない鼓動を
その意識を
遠ざけていくその企みは
きっと
絶望です
太陽に近づき過ぎて
美しく溶けていった誘惑の
最後の高揚です
譜奏51
穏やかに流れるカノンコードの
最後のセブンス
過ぎていった多くの時間を肯定し
さらに終わらない時の
リフレインを予感させる
二翼の天使
永遠であるはずのない鼓動を
その意識を
遠ざけていくその企みは
きっと
絶望です
太陽に近づき過ぎて
美しく溶けていった誘惑の
最後の高揚です
譜奏51
何も待たない夜明けの前
思い出すことの出来る日から
何年も
私のカラダに閉じ籠っていた
軟体の
呻くような音が
鳩尾の裏から抜けていく気配を
私は雑意の振りで聞いていた
説明のできる罪は人間にとって
一番の罰だ
声帯を持たないはずの音は
憎しみに似た衣擦れになって
消えていく
奏でられた振音のように
譜奏50
―――――いつか 闇の中
―――――手探りで あなた探した―――――――――『Je l’aime』より
遠くに聴こえる
横に引かれた柔らかなノイズが
波の音と気づき
風に押されるように歩いたら
私はいつしか
潮騒に消え
恋に苦しむ女になっていた
私が海ならと希い
この海が旅人ならと希った
何故なら
私はまだ幼く
湖面の月を揺らして遊ぶ
あどけなさに
包まれていたかったから
譜奏49
私の問いに対峙して
立体して
四角の墓標のように眠る
都会の闇に群れた
かげろう達の雨の夜
走り去ったヒールの音も
破れた叫び声も
孤独の骸も
ただ流されることもないままに潜み
地にせめぎあうままに
私は置き去られていた
ガラス窓を這う滴が視界を刺し
虹のような宝石に踊った
その一瞬から
譜奏48