2017年4月19日

穏やかに流れるカノンコードの

最後のセブンス

過ぎていった多くの時間を肯定し

さらに終わらない時の

リフレインを予感させる

二翼の天使

永遠であるはずのない鼓動を

その意識を

遠ざけていくその企みは

きっと

絶望です

太陽に近づき過ぎて

美しく溶けていった誘惑の

最後の高揚です

 

譜奏51

2017年4月17日

何も待たない夜明けの前

思い出すことの出来る日から

何年も

私のカラダに閉じ籠っていた

軟体の

呻くような音が

鳩尾の裏から抜けていく気配を

私は雑意の振りで聞いていた

説明のできる罪は人間にとって

一番の罰だ

声帯を持たないはずの音は

憎しみに似た衣擦れになって

消えていく

奏でられた振音のように

 

譜奏50

Je l’aime

―――――いつか 闇の中
―――――手探りで あなた探した

―――――――――『Je l’aime』より

 

遠くに聴こえる

横に引かれた柔らかなノイズが

波の音と気づき

風に押されるように歩いたら

私はいつしか

潮騒に消え

恋に苦しむ女になっていた

私が海ならと希い

この海が旅人ならと希った

何故なら

私はまだ幼く

湖面の月を揺らして遊ぶ

あどけなさに

包まれていたかったから

 

譜奏49

2017年4月12日

私の問いに対峙して

立体して

四角の墓標のように眠る

都会の闇に群れた

かげろう達の雨の夜

走り去ったヒールの音も

破れた叫び声も

孤独の骸も

ただ流されることもないままに潜み

地にせめぎあうままに

私は置き去られていた

ガラス窓を這う滴が視界を刺し

虹のような宝石に踊った

その一瞬から

 

譜奏48