2018年8月3日

残酷な蜂が飢餓の触角を動かすように

銀だけの絵を描き

絶望だけの物語を書き

明るい色のお菓子を食べ

オレンジジュースだけを飲めば

最後にはすべてがオレンジ色になり

オレンジの味しか残らない

過ちの蜜に心を動かされる性質は

性質とも言えない習慣だ

習慣ゆえに品位を誤魔化すことが皮膚化する

虚飾には虚飾を飾り重ねることが

一番効果的なのだから

貪欲を貪れば欲望の渇きが続いて止まらない

交互に揺れる触角のように止まらない

 

譜奏254

2018年8月1日

もうすぐ閉店時間になる人もまばらなカフェ

すっかり冷めたモカの残りを飲んで立ち上がろうとする時

ツンと

鼻から額にかけていつもの匂いがして

私はいつもそこにいる知り合いに会ったように

苦笑いのように会釈する

匂いの主は若くて未熟だった私の衝動だ

親しくもならず記憶にもならず金属臭のようになって

主はこの条件の環境の時にだけ現れてくる

すごく長く過ぎた時間の何処かに

私はきっとうち捨てるように埋めたのだろうと思う

邪魔にしかならないその衝動の損傷のようなものを

しかし今はその不安さえやさしく私を包む

またここにやって来る私を知る待ち人のように

 

譜奏253