2019年11月1日

色彩のない心の群れを通り過ぎて

私を認識していないアスファルトの音を聞いて

自分を知らない自分を悲しみのように憎みながら

ストリングスに目を閉じる夜

円運動で弾かれた糸音が憐れみのように身体を通り抜けて

私の中に変拍子を残していく

この苦痛を知りながら私がしばしば夜に抱かれるのは

私だけが知る私の罪を言葉にさせないためだ

その痛みを終わらせる時

私は死から目覚めたように瞼を開いて

祈りのように唇だけを動かして

その憎しみにやさしく話すように音を投げる

夜明けまで

生きると

 

譜奏448

2019年10月30日

私を女として見る男がいるなら

その目が猥褻な光を帯びているなら

私はその時美しいのだろうと思うことができる

それは誰だっていいの

天女のようにでも

生け贄のようにでも

相手に差し出すものが私にはあるのだから

オンナの本性って

飾りを捨てた女にさえ還ってしまえば

つまるところはそういう生き物でしかないのよ

正直になりなさい全力で

本当に短いんだから、あっという間の光なんだから

忘れちゃいけないの絶対

自分がどんな時に微笑んでいられるかということを

 

譜奏447

2019年10月28日

隠してばかりいて

心から離れた言葉ばかり使うから

キレイな欲望をウソで汚してばかりいるから

信じられなくなるのよ

愛が

せっかく白で産まれてきたのに

でもね、もうダメなの

濁ってしまったらね

だって

悪いことを考えると

悪いことを考えてる音がする

だって

良いことを考えると

良いことを考えてる音がするから

 

譜奏446

2019年10月25日

旅人が通らない道には生い茂った草木が陽を遮るように

名もない人の望みが夜の静寂音の中に消えていく時

私は怯えた目を泳がせながら月の陰を探したりしていた

知らず知らず私の声が水晶の洞窟の中で響いているように

知らない人のいくつもの声のように重なって

波が柔らかくぶつかり合ってその線を消すように消えていくのを

私は明晰夢の中でただ立ちつくして見ているように思えていた

今そして現実という空間はいったいどういう生命なのだろう

時という鼓動は影さえ持たないというのに

だからあの日私は逃げるように地下鉄の階段を走り下りて

追いかけるように最後の電車に飛び乗ったの

行き先のない明日に間に合ったようにも思いながら

運命の外接円に繋がれて引かれていくようにも感じながら

それが円なら同じことなのにとも思いながら

 

譜奏445