2019年10月25日

旅人が通らない道には生い茂った草木が陽を遮るように

名もない人の望みが夜の静寂音の中に消えていく時

私は怯えた目を泳がせながら月の陰を探したりしていた

知らず知らず私の声が水晶の洞窟の中で響いているように

知らない人のいくつもの声のように重なって

波が柔らかくぶつかり合ってその線を消すように消えていくのを

私は明晰夢の中でただ立ちつくして見ているように思えていた

今そして現実という空間はいったいどういう生命なのだろう

時という鼓動は影さえ持たないというのに

だからあの日私は逃げるように地下鉄の階段を走り下りて

追いかけるように最後の電車に飛び乗ったの

行き先のない明日に間に合ったようにも思いながら

運命の外接円に繋がれて引かれていくようにも感じながら

それが円なら同じことなのにとも思いながら

 

譜奏445