苦い苦い思いの中に心から愛しい人がいる
とにかくすごく感じの悪い人だった
そういう私も勝気で誰の言葉も聞かないような娘だったけれど
彼女がお金の亡者だという話はみんなが知っていて
どうやらそれは難病の息子さんがいるからということだった
私もその後いろんなことがあって思い出すこともなかったけれど
ばったり会った当時のバイト仲間と喫茶店で話していて
彼女が亡くなっていることを知らされた
その瞬間私の心に悲しいだけの青い雨のシーンが現れていた
彼女の細い声が打ちつける雨音の中で誰かを呼ぶ
1万回謝っても私自身が許せない最低な私が傘を回して振り返る
賄いのパンをみんなに買ってきてもらった私の分の小さなお金
うっかり忘れていただけなのにキツく咎められるように呼び止められて
あの日の夜、私は睨んで掴んだ小銭を彼女に投げつけていたのだ
譜奏456