2019年11月20日

苦い苦い思いの中に心から愛しい人がいる

とにかくすごく感じの悪い人だった

そういう私も勝気で誰の言葉も聞かないような娘だったけれど

彼女がお金の亡者だという話はみんなが知っていて

どうやらそれは難病の息子さんがいるからということだった

私もその後いろんなことがあって思い出すこともなかったけれど

ばったり会った当時のバイト仲間と喫茶店で話していて

彼女が亡くなっていることを知らされた

その瞬間私の心に悲しいだけの青い雨のシーンが現れていた

彼女の細い声が打ちつける雨音の中で誰かを呼ぶ

1万回謝っても私自身が許せない最低な私が傘を回して振り返る

賄いのパンをみんなに買ってきてもらった私の分の小さなお金

うっかり忘れていただけなのにキツく咎められるように呼び止められて

あの日の夜、私は睨んで掴んだ小銭を彼女に投げつけていたのだ

 

譜奏456