顔のない雨の日が続いていた頃
自分にウソをついて生きたら人生が偽りになると不意に思って
私は黄色い花を力任せに折ってゴミ袋に押し込んだ
花茎がキュっと鳴って鳴き声のように聞こえた
本に這う小虫を閉じ殺した時とは明らかに違う疵が
私の脳のどこかを壊死させたような気がしていた
どういう繋がり方をしたのか未だに理解できないが
私はその頃から突然衝動的に花のデッサンをするようになっていた
子供の頃でさえ何かを描くということをしてこなかったのに
それに楽しいとも思っていないのにいつまでも描き続けている自分にも
ただ手を焼くばかりの終わらないような日々が続いていた
しかしそう言うしかないところに実は私のウソの本質がある
私はずっとあっさりと気づいていたのだと思う
黒の単色だけが這った線に決して色付けなどできるはずがないということを
譜奏466