2019年12月13日

顔のない雨の日が続いていた頃

自分にウソをついて生きたら人生が偽りになると不意に思って

私は黄色い花を力任せに折ってゴミ袋に押し込んだ

花茎がキュっと鳴って鳴き声のように聞こえた

本に這う小虫を閉じ殺した時とは明らかに違う疵が

私の脳のどこかを壊死させたような気がしていた

どういう繋がり方をしたのか未だに理解できないが

私はその頃から突然衝動的に花のデッサンをするようになっていた

子供の頃でさえ何かを描くということをしてこなかったのに

それに楽しいとも思っていないのにいつまでも描き続けている自分にも

ただ手を焼くばかりの終わらないような日々が続いていた

しかしそう言うしかないところに実は私のウソの本質がある

私はずっとあっさりと気づいていたのだと思う

黒の単色だけが這った線に決して色付けなどできるはずがないということを

 

譜奏466