2019年12月11日

霧のような雲が月を横切ったあとにまた何かが月光をさえぎって

私は見知らぬ風のような恐怖を感じて数歩後ずさりました

それが聞き入れられない祈りの残滓のように思えたからです

思えばあの夜から私の胸に何かの種火が転写されたような気がします

そして私の苦しみの始まりの日でもありました

その火の放つ熱が愛に向かっていないとわかっていたから

生命が望む至高の完成というものはいったいどんな形をしているのでしょう

いっそそのようなものなど存在しないと願ってやまないのですが

私がその後奪い合うだけの人生を歩んだのは

ある意味摂理によるロジカルな約束事だったような気がしています

熱は燃えさかる炎になるわけでもなく決して消えるわけでもなく

得体の知れない苦しみだけを私に与え続けました

それは答があるからこその相対反応には違いないのでしょう

月が死んでくれれば愛でなくても向かう何かがあるのかもしれないけれど

 

譜奏465