小屋の楽屋に入ると脂粉の香りが充満していた
何度か打ち上げで顔を合わせた照明さんや若い踊り子に会釈して
吊るし衣裳をかき分けて奥に行くと彼女はまかないのカレーを食べながら
ごめんごめんちょっと待っててすぐ着替えるからと私に微笑んだ
鮮やかな銀飾りのドレス姿だったがむしろその鮮やかさが
今日の私には残酷な華やかさに見えて一瞬視線を落としていたようだ
彼女は高校を中退して男の子を産んでダンサーになると言って
突然着の身着のままでひどい雨の日に私を訪ねて来たことがあった
何故かそんな昔のことを思い出していたら
彼女は私をみつめて見透かすようにニヤッとして悪戯っ子のように
あなたはちょっと辛辣だけど正直だよねと言って
だから考えてることがわたしには全部わかっちゃうわよと笑って
でも大丈夫なの
嘘は毎日だからと言った
譜奏463