未来に盗聴器を仕掛けても
きっと私はわたしに何もしてやれない
流れるままに生きて知らない場所に行ってしまったら
またそこから流れていくだけなのだろうから
でも流れているということはいつかは止まるという約束でもあるから
そのいつかには私は海の病葉のようになって
藻場の森林を漂っていられたらそれでいい
未来なんて私には何の重力も持たない幻なのだ
今まで恥ずかしいから誰にも言わなかったけれど
儚い恋に苦しむ人魚が月影に映るわたしの胸の姿絵が
こんなにも孤独ぶった静寂な凪のせいで
誰かがケモノのように叫んだような声に似てしまったから
空も風も悲しい色に染まるしかなくなって
月も岩場も色線を消してしまったのだと私は思っていた
譜奏444