2019年10月21日

未来に盗聴器を仕掛けても

きっと私はわたしに何もしてやれない

流れるままに生きて知らない場所に行ってしまったら

またそこから流れていくだけなのだろうから

でも流れているということはいつかは止まるという約束でもあるから

そのいつかには私は海の病葉のようになって

藻場の森林を漂っていられたらそれでいい

未来なんて私には何の重力も持たない幻なのだ

今まで恥ずかしいから誰にも言わなかったけれど

儚い恋に苦しむ人魚が月影に映るわたしの胸の姿絵が

こんなにも孤独ぶった静寂な凪のせいで

誰かがケモノのように叫んだような声に似てしまったから

空も風も悲しい色に染まるしかなくなって

月も岩場も色線を消してしまったのだと私は思っていた

 

譜奏444