生きていることのすべてが
飾り事のように思える夜に
息を小さくした私にさえ
振り返ろうとしないように
思い出にならない夜が過ぎていく
私にもいつか
運命という訪ね人が現れるのだろうか
そうであるなら
キレイに生きられなくとも
何もかも
燃えつくすような激しさに
灼かれたい
たとえ
悪ふざけでも
譜奏325
生きていることのすべてが
飾り事のように思える夜に
息を小さくした私にさえ
振り返ろうとしないように
思い出にならない夜が過ぎていく
私にもいつか
運命という訪ね人が現れるのだろうか
そうであるなら
キレイに生きられなくとも
何もかも
燃えつくすような激しさに
灼かれたい
たとえ
悪ふざけでも
譜奏325
海水に重なる淡いヴィオレのように
私
自分を演じて
何かに似せて
生きてきたことを
胸に感じていた
吐き出した声が息のように消える
誰もいないスクランブル
青い文字時計を
屈むように見上げて
一度も歌わなかったのに
嫌いだった流行り歌
ふいに唇に流れて
どうして泣いているの
譜奏324
夢の中でしか思い出せないデッサンのような街を
粗い鉛筆の線で書かれた私が風に吹かれて歩いている
頬が丸くなって切ったことのない髪が短くなっていた
春の風が恋しいと思えるほど尖った風の中で
私は何処かに向かっている意識もなく
さらに歩いている実感さえ持っていなかった
ささやくようにかすかな雨の匂いがしていた
もし匂いを押しやって雨粒が落ちてきたら
この仮の絵にはきっと
雨のための新しい線が引かれるのだろうと思っていた
できることなら私はその線で重ねられて遮断されて
形を失くした雑線になっていたいと思った時
サテンのようにサラサラと揺れる髪が目に入って
この髪が消えてしまうのは少し悲しいとも思っていた
譜奏323
絆という言葉が私は嫌いだ
もしお互いがそう感じているのなら
きっとその言葉は二人の間で交わされない
保証
そして確認
人が生きていく上で避けられない保守行動と理解していても
その類いの全てが私には苦手なことだった
若さで尖っていた頃は浅ましいとさえ思っていたほどだ
年をとったらどうなるのだろうと思った日があった
そしてバランスの取れた穏やかさの中にいる自分を思い浮かべたりした
今となっては笑ってしまうしかないけれど
いつの時も人と人との始まりは曖昧なものなのに
終わりは何故か同じようになっていく
それが私には何かの罰のように思えてならない
譜奏322