2019年1月16日

生きていることのすべてが

飾り事のように思える夜に

息を小さくした私にさえ

振り返ろうとしないように

思い出にならない夜が過ぎていく

私にもいつか

運命という訪ね人が現れるのだろうか

そうであるなら

キレイに生きられなくとも

何もかも

燃えつくすような激しさに

灼かれたい

たとえ

悪ふざけでも

 

譜奏325

2019年1月14日

海水に重なる淡いヴィオレのように

自分を演じて

何かに似せて

生きてきたことを

胸に感じていた

吐き出した声が息のように消える

誰もいないスクランブル

青い文字時計を

屈むように見上げて

一度も歌わなかったのに

嫌いだった流行り歌

ふいに唇に流れて

どうして泣いているの

 

譜奏324

2019年1月11日

夢の中でしか思い出せないデッサンのような街を

粗い鉛筆の線で書かれた私が風に吹かれて歩いている

頬が丸くなって切ったことのない髪が短くなっていた

春の風が恋しいと思えるほど尖った風の中で

私は何処かに向かっている意識もなく

さらに歩いている実感さえ持っていなかった

ささやくようにかすかな雨の匂いがしていた

もし匂いを押しやって雨粒が落ちてきたら

この仮の絵にはきっと

雨のための新しい線が引かれるのだろうと思っていた

できることなら私はその線で重ねられて遮断されて

形を失くした雑線になっていたいと思った時

サテンのようにサラサラと揺れる髪が目に入って

この髪が消えてしまうのは少し悲しいとも思っていた

 

譜奏323

2019年1月9日

絆という言葉が私は嫌いだ

もしお互いがそう感じているのなら

きっとその言葉は二人の間で交わされない

保証

そして確認

人が生きていく上で避けられない保守行動と理解していても

その類いの全てが私には苦手なことだった

若さで尖っていた頃は浅ましいとさえ思っていたほどだ

年をとったらどうなるのだろうと思った日があった

そしてバランスの取れた穏やかさの中にいる自分を思い浮かべたりした

今となっては笑ってしまうしかないけれど

いつの時も人と人との始まりは曖昧なものなのに

終わりは何故か同じようになっていく

それが私には何かの罰のように思えてならない

 

譜奏322