人生は楽しまないとという言い方が
私は嫌い
幸せになろうねというフレーズは
もっと嫌い
浅ましいというか単細胞というかそんな風にしか感じない
一定の人生の益を受けるのは当然で
その上自分好みの嗜好品を人生に加えていく
それは全く悪い考えではない
だってそうでしょと言われたら言い返せない
でも嫌い大嫌い
忘れていることが多過ぎる
人が尊大になっている
危ういほどに
私の私見に過ぎないけれど
譜奏173
人生は楽しまないとという言い方が
私は嫌い
幸せになろうねというフレーズは
もっと嫌い
浅ましいというか単細胞というかそんな風にしか感じない
一定の人生の益を受けるのは当然で
その上自分好みの嗜好品を人生に加えていく
それは全く悪い考えではない
だってそうでしょと言われたら言い返せない
でも嫌い大嫌い
忘れていることが多過ぎる
人が尊大になっている
危ういほどに
私の私見に過ぎないけれど
譜奏173
誤魔化そうとした表情が心の答えを表して
胸の背に淋しさをかすめる時
私は正直に生きた父と母を誇りに思う想いが
自分の心の底に落ちていこうとしている淋しさを
ただみつめているだけの自分を恥じていた
その底の記憶に流れるオルゴールのような音
いつからか聴こえなくなっていた魔法の音色
得体の知れない時の何かがそれを奪い合っていったのだろうか
私が選んだ人生
しかし私がすべてを選んだ訳じゃない
決められた地に引かれるように行くのなら
そしてやがて虹を見上げることになるのならもう少し
もっと淡い色がよかったと
私は小さな心の隅でそう思っていた
譜奏172
遊び道具にもならなくなった愛ほど
過食して
飾っていた自分の虚ろから逃れられないものになる
鍵穴からその愛を覗いていた私の卑屈の
マリオネットの眼
女は悲しみを遊ぶことを覚えて
夢中になっていく自分を過食するようになっていく
変え難いものにこそ
自ら受容していく純粋が必要なように
意味があるはずの絶望は気づいてしまった時に
消えていく約束で繋がれている事実だけを明かす
親切に
その紐に愛で紡がれた糸は使われていないと
教えてくれるように
譜奏171
遠くから聞こえる犬の鳴き声がカラスの声に聞こえて
眠りに落ちていく感覚もなく私は眠り
兆さないまま朝でもない時に私は目を覚ました
紅を引いて着飾ろうとした外に暗がりが広がる
焔の光の波長が短くなって消えていく素振りを見せながら
私の体内の乱数は組み立てられて
形を得た青に向かっていこうとしていく
危ういだけの衝動と自覚
しかし私はこのアンバランスな対を好み
いつも心のどこかで喝采を送ってしまうのだ
年老いて流浪に出ようとする旅芸人のように
虚脱した私はまた感覚もなく落ちていく
そんな私を見届けたように乱数の針は動きを止めていた
カラスの鳴き声ももう聞こえてこなかった
譜奏170