遠くから聞こえる犬の鳴き声がカラスの声に聞こえて
眠りに落ちていく感覚もなく私は眠り
兆さないまま朝でもない時に私は目を覚ました
紅を引いて着飾ろうとした外に暗がりが広がる
焔の光の波長が短くなって消えていく素振りを見せながら
私の体内の乱数は組み立てられて
形を得た青に向かっていこうとしていく
危ういだけの衝動と自覚
しかし私はこのアンバランスな対を好み
いつも心のどこかで喝采を送ってしまうのだ
年老いて流浪に出ようとする旅芸人のように
虚脱した私はまた感覚もなく落ちていく
そんな私を見届けたように乱数の針は動きを止めていた
カラスの鳴き声ももう聞こえてこなかった
譜奏170