2018年2月23日

誰かに見られたいことを書いた時

私は子供ながらに大らかな文字を選んで

さらにやさしく見えるように気を配って書いていた

いつそんなことを覚えたのか

今はそのノートの表紙に書いた

恥ずかしいとしか言えないタイトルしか思い出せないけれど

そんなことを思い出したのは

システム手帳に書かれていた狭い字間に気づいたからだ

私はきっと希っていたのだと思った

あの幼い日の私でさえ

はっきりと

あなたは何を思い何をしたいと思っているのですかと

天使に問うように

聞いて欲しかったのだと

 

譜奏185

2018年2月21日

枯れることを知らなかった花の根の横に

クレヨン画を埋めた

幼い衝動

私の目に映っていた二粒の星の移り火

動機を思い出せない

線を引いた記憶

そのありかのようなステンドグラスの

ランタンの陰

失くすことをただ恐れ

移り変わることを拒んだ

愛しさとも切なさとも

光りとも言えない重荷

あなたに示す友情は

忘却

 

譜奏184

2018年2月19日

何かの思いが宿っても

言葉にするのは

間違い

思いと言葉は

正反対のもの

正しいことをするのも

過ちを確認しているだけ

欲望の一つに過ぎない

比較して選んで過ぎる時間は

心を逃げられない虚ろに変えて

罪の味がする

知らぬふりして

黙っているのは

嘘と同じ

 

譜奏183

2018年2月16日

2コーラス目の変奏は何に媚びようとしたのだろうか

水槽の中の熱帯魚が雨の音を探すように顔を上げて

部屋に流れているヴィオラの三重奏に近づいてくる

ビスクドールの目も電池で保たれているように強い

泳いでいる命と命を模った愛玩具と

それを意識して夜を過ごしている肉体としての

私の命とその時間

この空間が祝福されているように感じた頃があった

全ての韻律が白の霧のように奏で合って

私は花回廊の色彩の中で玩具のように眠るのだと

しかし退屈なカデンツァから離れるように

いつしかそんな夜から私だけがいなくなっていた

もう若くないエンゼルフィッシュが色線を薄くして

媚びもなく弱い息を苦しむように

 

譜奏182