2018年3月5日

孤食を繰り返すしかない人の

孤独は思い出を冷やしていく

冷たくなった思い出は

今ある現実に宿らなくなり

色の無い映像になって

思い出すたびにリフレインをやめない

その繰り返しは過ぎた日に向かい

今から離れ

どんどん冷たくなっていく

それが孤独の正体のように

私が月を嫌悪したのは

萎んでいく人が土のように身を伏したのに

その姿を月が生け贄のように見て

笑っていたから

 

譜奏189

2018年3月2日

赤いガラス器

ロウソクを揺らす火

聖歌隊の歌声

憎しみの寡黙

断定できない望み

もしもという欲望

諦めという執着

守るべき滅び

受けるべき罰の沈黙

ー 何故遠ざかるように微笑むのか

ー 怯えることに疲れたと伝えているのに

ー もう私を知ることが無いのなら

ー もうあなたを知ることが無いのなら

私はまだ嘘の祈りを仮装して目を塞いでいるのに

 

譜奏188

2018年2月28日

不幸にすぐ喰いつく荒い息が首筋をかすめて

過去のような映像を繰り返す夢から覚めた目を支配していたのは

鉛に金色を混ぜたような見慣れない風景だった

おそらく私はこの風景を現実には見ていない

この中にいたこともないだろう

ということはこの風景は私自身が秩序的に編んでいる

不可解というよりその強い動機を私は知りたいと思った

蒼白いだろうと思える背景の丘の上に女の子がいる

その子が黒髪を揺らしながら日なたで踊っている

美しいものだけを見ているように

苦しい感情はその後にやってくる

私はその子に何が起こるか知っているのだ

そう思った時から風景は鉛色に変わっていくのかもしれない

このままにはしておけないと今私ははっきりとそう思っている

 

譜奏187

2018年2月26日

キレイな空

たくさんの屋根

いろんな色の服を着た子供たち

ありきたりな1日の午後が薄暮に移っていく様子を

私は窓のそばから離れずにずっと見ていた

この景色が永遠に続くことはないと思いながら

誰にともなく私は叶うならと前置きして

私は振り回されるのなら

例え行き止まりの永遠であってもと

宵が張られていく窓につぶやいた

時計が悲しそうに響いていたけれど

無防備な気持ちは装いのような影に見えていくから

決して希いでも憧憬でもないのにと

私は言葉の息を何もなかったように潰すしかなかった

 

譜奏186