孤食を繰り返すしかない人の
孤独は思い出を冷やしていく
冷たくなった思い出は
今ある現実に宿らなくなり
色の無い映像になって
思い出すたびにリフレインをやめない
その繰り返しは過ぎた日に向かい
今から離れ
どんどん冷たくなっていく
それが孤独の正体のように
私が月を嫌悪したのは
萎んでいく人が土のように身を伏したのに
その姿を月が生け贄のように見て
笑っていたから
譜奏189
孤食を繰り返すしかない人の
孤独は思い出を冷やしていく
冷たくなった思い出は
今ある現実に宿らなくなり
色の無い映像になって
思い出すたびにリフレインをやめない
その繰り返しは過ぎた日に向かい
今から離れ
どんどん冷たくなっていく
それが孤独の正体のように
私が月を嫌悪したのは
萎んでいく人が土のように身を伏したのに
その姿を月が生け贄のように見て
笑っていたから
譜奏189
赤いガラス器
ロウソクを揺らす火
聖歌隊の歌声
憎しみの寡黙
断定できない望み
もしもという欲望
諦めという執着
守るべき滅び
受けるべき罰の沈黙
ー 何故遠ざかるように微笑むのか
ー 怯えることに疲れたと伝えているのに
ー もう私を知ることが無いのなら
ー もうあなたを知ることが無いのなら
私はまだ嘘の祈りを仮装して目を塞いでいるのに
譜奏188
不幸にすぐ喰いつく荒い息が首筋をかすめて
過去のような映像を繰り返す夢から覚めた目を支配していたのは
鉛に金色を混ぜたような見慣れない風景だった
おそらく私はこの風景を現実には見ていない
この中にいたこともないだろう
ということはこの風景は私自身が秩序的に編んでいる
不可解というよりその強い動機を私は知りたいと思った
蒼白いだろうと思える背景の丘の上に女の子がいる
その子が黒髪を揺らしながら日なたで踊っている
美しいものだけを見ているように
苦しい感情はその後にやってくる
私はその子に何が起こるか知っているのだ
そう思った時から風景は鉛色に変わっていくのかもしれない
このままにはしておけないと今私ははっきりとそう思っている
譜奏187
キレイな空
たくさんの屋根
いろんな色の服を着た子供たち
ありきたりな1日の午後が薄暮に移っていく様子を
私は窓のそばから離れずにずっと見ていた
この景色が永遠に続くことはないと思いながら
誰にともなく私は叶うならと前置きして
私は振り回されるのなら
例え行き止まりの永遠であってもと
宵が張られていく窓につぶやいた
時計が悲しそうに響いていたけれど
無防備な気持ちは装いのような影に見えていくから
決して希いでも憧憬でもないのにと
私は言葉の息を何もなかったように潰すしかなかった
譜奏186