2019年12月25日

讃美の日曜

男装の月曜

火曜に浮浪の者となり

娼婦の水曜

発赤毒の木曜

女優の金曜

夢自慰の土曜

サルサの月曜

火曜に巡礼の者となり

耽溺の水曜

猩紅熱の木曜

聖女の金曜

性奴隷の土曜

葬列の日曜

 

譜奏472

蒼の夜 4

蒼の夜に。

私は最後に会いたい人がいると言った。

その言葉がエメラルドガラスの匣に消えていく。

今一つを願えば他のすべての望みを忘れてしまうことになると。

やさしく窺うようにパンドラは私に微笑みかけて。

夜明けを待たない星光の帯の道を。

白の燐光を纏う幻のように駆け抜けていった。

解決することがすべてじゃない。

自分さえ目を背ける自分の心の卑しさを。

誰に話せるというのだろう。

言葉を失くした口唇裂の唇から風のように漏れた韻律を。

私は最初の哀しみのように聴いていた。

そして胸に返したその風の聲を懸命に聞き取ろうとしていた。

私もたくさん間違って生きてきたことを知っていたから。

 

譜奏471

2019年12月23日

自分の信念を持って生きるということは素晴らしいことだと思っていた

その上に確かな夢の葉が生い茂り使命へと研ぎ澄まされていく

これ以上ない祝福された人生の在り方だと誰しもがイメージするだろう

私も一度としてそれを疑ったことがなかった

そんな自分になるために精一杯の葛藤を繰り返してきたと言っていいから

しかし、と私は今思ってしまっている

その信念。

出自の不明なその信念という固形物のような感触のものは

いったい何によって受粉して形を得たものなのだろうと

そもそもその胚と受け入れる着床という機能の構図は

どんなロジックによって何者が用意したものなのだろうと

しかし多分こんなことは考えるだけムダで不毛な問いでしかない

結局人は解らないことは神の仕業ということにするしかないのだろうから

近頃私は投げ出すように最後は神という結びが鼻についてしかたないのだ

 

譜奏470

2019年12月20日

さびしいくらいでちょうど生きてる気がしている

苦しみに沈む時は雨を待てばいいくらいに思っている

悲しみを感じることはほとんどない

誰かの約束を盗んでその約束を守るために生きてもいいと

飛躍した妄想に衝動を覚えたりすることがある

私は私自身が人生のありきたりな光景の中の一つでしかないと感じている

この身体に流れる血でさえ借り物のような気がしているのだから

私は待っている

気まぐれに操り糸を引く人を焦がれる埃っぽいマリオネットのように

運命という訪ね人が近づいてくる足音を

赤信号で止まって青信号に変わって歩き出す日々の多くの無口な制約

顔も内臓も白く透けたように見えていたのかもしれない

夜のバスの窓からありふれた景色のように私を見る人の目が

捨ててきた過去のようにすぐに消える風音の背後を通り過ぎていった

 

譜奏469