2018年5月18日

陽の光は見上げる人に未来を思わせて

高価な本を駄目にする

限りそのものが無いから物事に二面性の枠など収まらない

だから何をしても何を思っても良いけれど

嘘だけは死を覚悟してツくようにと

微笑みのように語った後

希望というのは曖昧な味しかしないから

千回盗んで食べても

最後に一回だけ絶望に捕まって

一回だけ死んだらいいことだと言って

寝返りをうって遠い見知らぬ町に行き

名も知らないものを食べ安い無駄な本を読んでいた

昨日では手に入らない

明日には消える私

 

譜奏221

2018年5月16日

ピエロが起こしにくる朝に

消えていく声が誰かを呼ぶ音が聞こえる

渇いた砂風の中で立っていた

裸足のストリートオルガンの少年が見ていたのは

私の視界の中の夢だったのか

それとも夢の出口にいる私を案じていたのか

哀しみのような切なさのような無力な目を

私は負担に感じて逃れてきたような気がする

人が持つそれぞれの原景にはどのような起因があるのだろう

環境というプロセスはどれほどに人を囚えるのだろうか

風の声が私の名を呼んでいるような気がする

何処へ行けと言うのだろうと私は怯えて

また時を裂いて夢の入口を探そうとする

ピエロの木靴の足音に耳を塞ぐように

 

譜奏220

2018年5月14日

ターコイズ色の海に囲まれた森の物語には

生き生きとした動物たちと海の中の魚たちの幸せなお話が

咲き乱れる四季の花々のように描かれていて

私はいつか大人になったらその森で暮らしたいと思いながら

読んでくれる人の膝の上でその声を子守唄にするように

いつも最後まで聞くこともなく眠ってしまっていた

私がその物語の結末を読んだのは

その本のこともすっかり忘れていた引っ越しの朝のことだった

手と目に記憶の息を止められて思っていたのは

おとぎ話には必ず悪魔が登場してくるということだった

帯びたアプリコットの芯が徐々に媚びを緩めて

剥がれていくコンパッションになっていくように

もしかしたら私は知っていたのかもしれない

問い続けると死ぬ星のことを

 

譜奏219

2018年5月11日

変貌を期待する女性たちの潜在的な本質を煽って

流星がその勢いのままに空を一閃すると

希望としての悪女願望が発生するのは責められないものになる

変化はいつも無い物ねだりから始まっていくものだから

その後女性たちは真似事の祈りで嘘を練習するようになり

その効果を狡猾な純粋さで計るようになる

一度として流星の素性を疑うこともなく

そして言うのだ

あー何の味もしないと

期待していた高揚と願望が摩擦する音を棒読みするように

悪女は必ず一度そう口にして崩した性を振舞ってまた

何の味もしないと2度目は自分に聞こえるように言う

空なんか見てないでやっぱり自分が成長していかなくちゃと

まるで媚びたオモチャを投げ捨てて嗤うように

 

譜奏218