天使と悪魔の間に果物が置かれていたら
その誘惑に手を伸ばすのは当然のことのように思えるのにと
私はそこまで立ち入ってきた寓話の性悪さを嫌っていた
偏った示唆は何かしらの私欲の意図が産んだものだ
ただ人びとへの扇情に長けていたに過ぎない
月よ星よ宙よと私は声にする
あなたもその片棒を担いでいる手先なのかと思ったら
やはり切なさだけが私の胸に一色になって広がっていった
対面に罪だけが配置されていることを空しく思いながら
祈りの形を忘れた手を見ているうちに
私はいつしか眠ってしまったのだろう
夢の中を無数の文字のように見える雪が
始まったばかりのように永遠に終わらないように
戯けながら私をみつめ返して嗤っているように見えていた
譜奏425