2017年4月24日

人にはスタートを切る季節がある

社会へ夢へ

またはそれを両手に

しかし私はその季節を

耽美の中に漂うようにして過ごした

活気を放つ同世代の群れから外れ

霧の形をした胸の炎と

大気に描がいた幻のような夢を

交互に首を揺らしてみつめていた

選んだ訳ではなく

選ばれたはずでもなく

それが私に与えられたプログラムの

起点に打ち込まれた柔らかな熱の

楔のように

 

譜奏53

2017年4月21日

丸く透き通る水晶のような球体を

人間が生まれながらに

与えられていたなら

その中に

生きる答となるべきものは

例えば水中花のように揺らぎ

示されているのだろうか

私はそんな妄想にやさしく

頷いていたかった

カラーローズと同じ数で

反面に佇む14の漂人が

萎えた宿命のように私を

その球体面から

覗き込んでいたから

 

譜奏52

2017年4月19日

穏やかに流れるカノンコードの

最後のセブンス

過ぎていった多くの時間を肯定し

さらに終わらない時の

リフレインを予感させる

二翼の天使

永遠であるはずのない鼓動を

その意識を

遠ざけていくその企みは

きっと

絶望です

太陽に近づき過ぎて

美しく溶けていった誘惑の

最後の高揚です

 

譜奏51

2017年4月17日

何も待たない夜明けの前

思い出すことの出来る日から

何年も

私のカラダに閉じ籠っていた

軟体の

呻くような音が

鳩尾の裏から抜けていく気配を

私は雑意の振りで聞いていた

説明のできる罪は人間にとって

一番の罰だ

声帯を持たないはずの音は

憎しみに似た衣擦れになって

消えていく

奏でられた振音のように

 

譜奏50