人にはスタートを切る季節がある
社会へ夢へ
またはそれを両手に
しかし私はその季節を
耽美の中に漂うようにして過ごした
活気を放つ同世代の群れから外れ
霧の形をした胸の炎と
大気に描がいた幻のような夢を
交互に首を揺らしてみつめていた
選んだ訳ではなく
選ばれたはずでもなく
それが私に与えられたプログラムの
起点に打ち込まれた柔らかな熱の
楔のように
譜奏53
人にはスタートを切る季節がある
社会へ夢へ
またはそれを両手に
しかし私はその季節を
耽美の中に漂うようにして過ごした
活気を放つ同世代の群れから外れ
霧の形をした胸の炎と
大気に描がいた幻のような夢を
交互に首を揺らしてみつめていた
選んだ訳ではなく
選ばれたはずでもなく
それが私に与えられたプログラムの
起点に打ち込まれた柔らかな熱の
楔のように
譜奏53
丸く透き通る水晶のような球体を
人間が生まれながらに
与えられていたなら
その中に
生きる答となるべきものは
例えば水中花のように揺らぎ
示されているのだろうか
私はそんな妄想にやさしく
頷いていたかった
カラーローズと同じ数で
反面に佇む14の漂人が
萎えた宿命のように私を
その球体面から
覗き込んでいたから
譜奏52
穏やかに流れるカノンコードの
最後のセブンス
過ぎていった多くの時間を肯定し
さらに終わらない時の
リフレインを予感させる
二翼の天使
永遠であるはずのない鼓動を
その意識を
遠ざけていくその企みは
きっと
絶望です
太陽に近づき過ぎて
美しく溶けていった誘惑の
最後の高揚です
譜奏51
何も待たない夜明けの前
思い出すことの出来る日から
何年も
私のカラダに閉じ籠っていた
軟体の
呻くような音が
鳩尾の裏から抜けていく気配を
私は雑意の振りで聞いていた
説明のできる罪は人間にとって
一番の罰だ
声帯を持たないはずの音は
憎しみに似た衣擦れになって
消えていく
奏でられた振音のように
譜奏50