―――――いつか 闇の中
―――――手探りで あなた探した―――――――――『Je l’aime』より
遠くに聴こえる
横に引かれた柔らかなノイズが
波の音と気づき
風に押されるように歩いたら
私はいつしか
潮騒に消え
恋に苦しむ女になっていた
私が海ならと希い
この海が旅人ならと希った
何故なら
私はまだ幼く
湖面の月を揺らして遊ぶ
あどけなさに
包まれていたかったから
譜奏49
―――――いつか 闇の中
―――――手探りで あなた探した―――――――――『Je l’aime』より
遠くに聴こえる
横に引かれた柔らかなノイズが
波の音と気づき
風に押されるように歩いたら
私はいつしか
潮騒に消え
恋に苦しむ女になっていた
私が海ならと希い
この海が旅人ならと希った
何故なら
私はまだ幼く
湖面の月を揺らして遊ぶ
あどけなさに
包まれていたかったから
譜奏49
私の問いに対峙して
立体して
四角の墓標のように眠る
都会の闇に群れた
かげろう達の雨の夜
走り去ったヒールの音も
破れた叫び声も
孤独の骸も
ただ流されることもないままに潜み
地にせめぎあうままに
私は置き去られていた
ガラス窓を這う滴が視界を刺し
虹のような宝石に踊った
その一瞬から
譜奏48
平坦な退屈の中には
それ故の平安があるものと
社会は匂わせ
多くの人はただそれを信仰し
辺りを見回し
日常の煩雑さと向き合い
対極へと置いて生きていく
そう見えて悲しく捻れていた
私の退屈
死のような退屈
そして私は逃げるように
偽りの苦さを求めた
老いを怖れるあまりに追う
タナトスの火のように
譜奏47
―――――ねぇ、あなたはみつけた?
―――――あたたかなぬくもりを
―――――やわらかなまなざしを
―――――強く抱きしめる手を――― ――『GYPSY Ann』より
心にフィルムがあるのなら
灼き付けていたはずの
春の花降る優しさに
微睡んでいた
私の無邪気
絶望にも
希望にも
侵されず
一度の抱擁で
私の欲望は
繭人になることを
望んでいたのかも知れないと
今想う私を
知らせる息も遠く
譜奏46