氷河で削られてできた深い湖の
湖面のスクリーンに
いろんな色に変わっていく花や
木の葉が映っていた
それを見た少女は目を見開かせて
わずかに揺れる色を楽しみ
形を聞き
音を見つめていた
母を失くしていた少女はある日
湖に立って遠くに行くのと囁いた
だからもし空から見てるなら
これからはもう見ないでと言った
良いことは起こらないから
だからもう見ないでと囁いた
譜奏57
氷河で削られてできた深い湖の
湖面のスクリーンに
いろんな色に変わっていく花や
木の葉が映っていた
それを見た少女は目を見開かせて
わずかに揺れる色を楽しみ
形を聞き
音を見つめていた
母を失くしていた少女はある日
湖に立って遠くに行くのと囁いた
だからもし空から見てるなら
これからはもう見ないでと言った
良いことは起こらないから
だからもう見ないでと囁いた
譜奏57
バラードの4拍子の中に
埋もれていた切ない時間が
無数の放物線のようになって
眠りを妨げる夜
親しんだフレーズに
耳を塞いだ手を
開かない貝の形にして
私は
異物のようになっている心が
身体から切り離されることを
祈るようにその静けさに委ねた
私は怯えていたのかも知れない
私そのものが変わっていく
確かな兆しに
譜奏56
雑踏を過ぎる人々を
予めの気まぐれな春の前触れを
私はカフェの一面窓を射す陽に視界を歪ませながら
朽ちていく者たちを見送るように見ていた
私自身がそこに居ない安堵を
健やかな傲慢と自覚しながら
この世は根の区別されない価値を比較することで
曖昧なIDをカモフラージュしている曲者だ
寄り添うことに意味があるのかと問うことなど
虚ろな歪みのように萎えていく
極端な判断だろうと思う
しかし私の魂の根は確かに遠い喝采を感じ
私の中の異端を愛し始めていくのを
止められないでいた
譜奏55
天気雨の夏の日に空を見て
私は鳥になって空を飛んで
遊んでいたいと思った
やがて夕焼けになり
夜になり
キレイな三日月を見て
私は月になりたいと思っていた
そして願えば私は
鳥にも月にもなれると信じていた
思えばそれは
欲望の始まりだった
今私は鳥の死骸を見ても
月を黒く塗りつぶしても
哀しみの影さえ動かない
譜奏54